ウェットスーツ職人の「技」　仕上げ編

笠島洋

最後の仕上げが大事なんですよ。

私はウェットスーツ職人ですが、料理も好きなんです。

はいこちら、ワタシ作の和風ハンバーグです。

和風ハンバーグの仕上げに、大根おろしを添える。
この大根おろしが無いと「和風」感がないですし、「和風」であることを証明するためにも大根おろしが必要不可欠。
最後の仕上げが大事なんですよ。

さてさて、ここまでのシリーズブログ「ウェットスーツ職人の技」でご紹介した通り、ウェットスーツの製造工程は大きく分けて…
１型紙作成　２生地取り　３裁断　４ノリ塗り　５組み立て（貼り）　６縫製　７仕上げの７段階。
今回のブログではいよいよ「７　仕上げ」のご紹介となりました。
ウェットスーツの最後の仕上げの大根おろし・・・ではなく仕上げがいかなるものか、早速見ていきましょう！

前回までのブログで、工程の６番目「縫製」まで作業が進みました。
見た目としてはもうすっかりウェットスーツの形にはなっていますが、まだ着られる状態ではありません。

まずはオプションの「折り返し」がある場合は、このタイミングで折り返し加工をします。

「ミシン編」でご紹介した「ロックミシン」と「本縫い（ジグザグ）」を使って折り返します。

折り返し部分には帯状の1mmの生地を使用し、シワが出ないように丁寧にミシンを進めます。

次に裏側の「補強」をします。
以前にも少し触れましたが、昔は裏側も全て縫製していました。しかしこの「両面を縫う」事が、実は浸水の原因にもなり得ることがありました。
表側から縫った糸と裏側から縫った糸が生地の中で絡んで、その糸同士を伝って浸水してしますのです。
そこで現在では裏側の縫製はしていないのですが「縫製をしない」というだけでは強度に問題が生じます。
そこで「裏側の補強」が必要になってくるのです。

「ホットメルトテープ」を使用して「テンションのかかる部分」、例えば股の良く伸びる部分や、パーツ同士の交差点など。着脱時や着用中に広がりやすい部分を補強します。

「ホットメルトテープ」と言う名の通り、アイロンで熱を加えて仮止めをし・・・。

プレス機でしっかりと熱と圧力をかけて圧着します。

この「ホットメルトテープ」は、様々な形状があります。

帯状、丸型大小、角形大小、への字・・・。
これらをそれぞれの用途に合わせて使い分け、一番多いモデルではおよそ40箇所もの部分に補強を施します。

全ての補強を施して、いよいよウェットスーツの完成となりました。

完成したウェットスーツは、一着一着、職人自ら検品をします。
お客様のオーダーの通り、生地の種類や厚みやカラーに誤りがないか？

マークやワッペンの色と位置に誤りがなく、きちんと施工されているか？

縫い目はほつれがなくきれいに縫えてるか？

接着部分は剥がれがなく正しく貼れているか？

補強テープに剥がれがないか？

ファスナーの開閉に問題はないか？

全ての箇所を、職人の手と目で細く検品をします。
そして最後にカスタマーカードに、お作り頂いたウェットスーツのモデル名、シリアルナンバー、お客様のご氏名記入をします。

このカスタマーカードは、単にウェットスーツの識別をするためだけのものではなく、お客様に職人技をお約束する証明書です。

そう、このカスタマーカードこそ、和風ハンバーグの大根おろしです！

大根おろしが乗っていれば和風ハンバーグとなるのではなく、食材や味付け全てが「和風ハンバーグ」となるべく作られているからこそ、最後に大根おろしを乗せることができるのです！
DOVEのウェットスーツも全ての工程に職人技が施され、職人による検査をし、「国産高級ウェットスーツ」として作られているからこそ、仕上げとしてカスタマーカードによるお約束ができるのです。