ウェットスーツ職人の「技」　ミシン編

笠島洋

「メカ」好きですか？

ロボットアニメやSF映画、ゲームやマンガ。
子どもの頃から様々な「メカ」に触れてきました。

色々な大きさの歯車が並び、それらが連動して動き出す様はまさに芸術品！
重厚な鉄のパーツが放つ鈍い輝きや、オイルの匂いを感じさせる適度な劣化・・・。
そのデザインは無骨であればあるだけ良いっ！

なーんて、私の変な趣味を晒したところで今回のブログは・・・。
ウェットスーツ工場で働くメカ！そう！ミシンです！
「ウェットスーツ職人の技　ミシン編」です！

ウェットスーツの製造工程は大きく分けて…
１型紙作成　２生地取り　３裁断　４ノリ塗り　５組み立て（貼り）　６縫製　７仕上げの７段階。
今回はその６番目「縫製」の様子をご覧いただきましょう。

一般的に「ミシン」というと、この写真のような形のものが思い浮かびますよね。
学校の家庭科室にあったり、ご自宅に持っている方もいらっしゃるような「一本の針が上下に動く」タイプです。
専門的には「本縫いミシン」と呼ばれるミシンですが、DOVEのファクトリーではワッペンの縫い付け等に使用しています。

実はこのミシン、設定を変えるとジグザグに動くんです。

折り返し部分や「丸ワッペン」の縫い付け部分などの糸がジグザグになっているのが分かると思います。

・・・そうなんです。この良くある「本縫いミシン」だけでは、ウェットスーツは作れないのです。
一言で「ミシン」と言っても、使用目的や用途によって様々な種類があるんです！
DOVEのファクトリーでは、この「本縫いミシン」のほかに５種類のミシンが日々活躍しています！

重ね合わせた二枚の生地の端を縫う「ロックミシン」。

袖口やチェストジップのファスナー引き手など、力のかかる部分を補強する「カン止めミシン」

ハイサマーアイテム等の切り口をカバーする「パイピングミシン」

同じくハイサマーアイテムなど薄い生地を縫い合わせる「フラットシーマ」

ミシンによって形状や針の数も様々です。

こちらは「フラットシーマ」４本の針と、切り屑を吸い込むためのノズルが付いてます。

そしてこちらは「パイピングミシン」針が２本と切り口をカバーするためのテープをガイドする「ラッパ」というアタッチメント付き！

それぞれのミシンがそれぞれに特徴的で、本当は一つ一つご説明したいところですが・・・。
文字と写真だけではお伝えしきれないので、こちらの動画「職人技　ミシン編」をぜひご覧ください！

このように色々な種類のミシンを駆使してウェットスーツを作るのですが、なんと言っても特に特徴的なのはこのミシン！

ウェットスーツを作る上で最も多く使用する「平すくいミシン」です！
この「平すくいミシン」最大の特徴は・・・。
針が横向きに動くという事です！

どういう事かというと・・・

この赤丸の中に、黒い糸の通ったミシン針の先端が見えます。この針が・・・。

弧を描いて右に移動しているのが分かります。

垂直方向に動くミシンは、当然生地を貫通して縫います。しかしこの「平すくいミシン」は、生地を貫通しないのです！
その名の通り「平に、すくい」ながら縫うミシンなのです！貫通してしまったらその穴から浸水してしまいますしね。
実際に動いている様子は先ほどの動画でも見る事が出来ますので是非ご覧ください。

しかしただミシンのペダルを踏むだけでは縫えないのがこのミシンの難しさ。
生地の厚みによって針の通る「深さ」を調整し、
生地の柔らかさによって糸の「締め具合」を調整します。
この調整を誤ると・・・。

この様に表に貫通してしまう「事故」も起きてしまいます。