photo by Denjiro Satoh
今、これを私のホームグラウンドの一つ南紀のサーフポイントで書いています。
波は1〜2Feet位で風はごくゆるいオフショア日本にしては距離のあるパーフェクトなレフトのポイントブレイクです。足元には浜昼顔が咲き乱れ、空は青く磯ひよ(小鳥)の囀りと波の音だけです。海には6人のサーファーと、浜辺で数人のロコサーファーがたわいも無い会話をしています。この美しい自然の場所にもあの忌々しいテトラポットが私の視界の中に入ってきます。見渡す限りにこのテトラポットがこのサーフポイント周辺に無ければ本当の意味で私の思うところのパーフェクトなのですが・・・
本来、私の理想のサーフィン感とは、手付かずの自然の中(サーフィンの為のパーキングエリアやシャワーやトイレなど人の手の入ることの無いサーフポイント)が理想だと思います。
私は和歌山南紀新宮の海の前で生まれました。庭の先から魚釣りが出来るような所でした。
その後日本の高度成長という名のもとに私の家の前の海岸線や長く続く美しい玉石の浜、その周辺の松林、岸から200〜300メートル先に有る幾つかの小島その周辺に有る波をもたらすリーフなど、子供の頃、杉板や、学校の机の板などで、つかし(今で言うボディーボード)で遊べるリーフも幾つか、有りました。今にして思うと十分にサーフポイントとなり得るものでした。
それらの多くが港湾整備事業の名目でことごとく無残にも姿を変えられ失いました。
今の私にとっては幼少の頃から自分たちが暮らしている近辺の海や海岸、河川、山などの自然は父や母、家族と同じく数え切れない程の思い出と、思い入れが有りました。
その自然を無造作に破壊してしまうということは、肉親や友人を失われたような感情を覚えます。もうその姿は古い写真でしか見ることが出来ません。
少し話がシリアスになってきそうなので、とりあえず今、目の前にあるサーフブレイクにロングボードでサーフィンしてきます。きっとSURFした後の方がよい気持ちでバイブレーションが伝わると思うので・・・・
やっぱりサーフィンは気持ちいいですよね。今日はラインナップの少し沖に二匹のウミガメを見ました。もうそろそろこの地方ではウミガメの産卵期に入るので沿岸近くまで来ています。水の透明度も抜群で魔法のスティックの下に見える水の中のリーフの景色がどんどん移り変わってゆくのがはっきり見えます。こんなすばらしい自然の中で幸せ感を感じ取れるサーフィンを子供たちに伝えたい思いをいつも考えています。
南紀地方はビーチブレイクポイントが少なく小さな子供がサーフィンをスタートするには少し抵抗のある所です。(エクセレントスポットは多々有るのですが・・)
今回サーフィンリーフを提案したのは今に考えたことではなく、ずっと以前から私の頭の中に有りましたが、その頃のその場所は手付かずの長い美しい砂浜でそんな美しい砂浜の中へ人工的な手を入れる気持ちは恐れ多くも毛頭有りませんでした。それが約10年ほど前、
砂浜の左端にまったく用の足さない又無意味な、漁港を作ってしまったのです。
その為美しい海水浴場の砂浜の景観が一変してしまい、それに伴って景気の低迷も加わり
海水浴客(マリンレジャー)の観光客が激減しました。
それどころか、その港の為に海流に変化が加わり浜の砂までなくなりだしたのです。
それに対処すべく砂浜沿岸より数十メートル沖合い海中に自然石の流砂止めブロックを投入したのです。そうしてまったくの手付かずであった、私の大好きな海水浴の海岸が人間の手の入ったものに変えられてしまいました。悲しみ・・・怒りすら覚えました。
一度人間の手が入ってしまったその砂浜へその頃からその流砂止めブロック(自然石)の形を工夫することによってサーフィンにも適した波を作り出すことを考えました。皆さんの近くでも消波の為の海中に投入したテトラポットや漁場育成のためのコンクリート漁礁などへスウェルがヒットし波をもたらしていてもう少し工夫すればサーフィンにも適したライダブルな波を得られるだろうという多くのサーファーが経験してまた、感じていることが今回のサーフィンリーフのヒントでした。実現へのきっかけは2年程前、私の叔父の葬儀の時、那智勝浦町観光協会の芝先氏と面識をもちその時、那智勝浦町の観光低迷打開案としてこの案を話すと、彼は非常に興味を持ってくれ、また以前からローカル&ビジターサーファーを含め多くのサーファーが近辺のサーフポイントの清掃活動、環境保護やレスキュー活動を長い間続けている事の良き理解者でもありました。
その後、昨年6月芝先氏から連絡があり和歌山県振興局の山本氏が(今では良き友人で彼もまたサーファー)私の話に興味を持たれていると連絡があり、夢のような話が急速に現実化していきました。
人の輪とは大変すごいものです。サーフィンリーフ実現に向かい色々な問題も生じ、それらの解決の為もう一人の友人である和歌山サーフィン連盟の梅本氏にも今回のプロジェクトの事情を話しそれに協力してもらえるよう御願いしました。そして梅本氏からの紹介で学識者である鈴木高二朗氏、(彼も今では友人でありサーファーです。)彼らの協力で今回の実現に至りました。やはりサーファー同士のバイブレーションはすごいものだと思います。
私がサーフィンに出会って本当に数多くの友人、また他の文化に触れ合う機会が出来、私の人生は最高の人生をおくれている事を多くの友人に感謝しています。
時には意見の食い違いや人生観の違いで口論や小さなトラブルも多々有りますが、それはそれで次のグッドサーフで頭の中も真っ白に洗い直しお互いに良い方向に持っていけると思っています。
私達にとってまず一番の魅力であったのは日本初の取り組みであるということ。そして少ない予算が逆にインパクトがあること(私が思うに巨額な予算は利権がらみになったり、取返しのつかない環境破壊なってしまうのを懸念しました。)自然石の投入については、海中への防砂ネットの設置や土嚢の積み上げ案も有りましたが、(自然還元できる土嚢バック)地元地域の漁業者の理解を求めるには魚場作りも兼ねる自然石が環境的にも優しく、また建設予算と同じ位の金額費用で(約800万円)撤去も可能ということが最大のポイントだと思っています。
ビーチのショアブレイクでは子供たちやサーフィンをスタートする人達に適した安全なポイントであり、大きなスウェルが入った時は約80〜100m沖合いの自然石のリーフで出来る波でサーフ可能このポイントにはサウススウェルがあまりヒットしない為オーバーヘット以上の波はめったに立たないであろうが、チャンネルによる強烈なリップカレントはあまりないと私たちは予想します。したがって事故の確率も他の場所よりは安全だと確信しています。
1〜2Feetの海にパドルアウトするのもオーバー25Feetのクローズアウトセットの合間のタイミングをみて命掛けでパドルアウトするサーフィンも基本的に海の中はすべて自己責任です。(人のミスに巻き込まれる人災的なアクシデントは別として。)今では私たちの住んでいる近辺の(和歌山県全域も含め行政の方々も教育関係の人達も)住民の方々サーフィンの楽しさ素晴らしさやサーファーひとりひとりが環境問題や海岸線の清掃活動に一生懸命取り組んでいる姿が理解して頂けていると思います。とにかく私達にとってサーフスポットが南紀に増えることは大変好ましいことであり、これが話題を呼び那智勝浦町近辺への観光客が少しでも増えれば(那智勝浦町周辺の人々の希望である)大変有り難い事でこれがきっかけになってハードなフォローウェーブやビッグウェーブ用リーフなど色々なバリエーションのサーフィンリーフが日本の他の場所にも出きるかもしれない。
私としての理想は景観的、環境的(生態系)に十二分に配慮されたものでなければならないと思います。
一人でも二人でも出来るだけ多くの人がサーフィンとかかわって多くの環境問題への興味を持って欲しい。私たちサーファーは色々な形で海の恩恵を受けて生きているから。
少しでもそういった布石になればと思います。
KEEP SURFING
ENJOY SURFING
MAKE SMILE
IT’ S WONDERFUL LIFE
By SUNAO.SUMI
Specal Thanks
芝先 隆 和歌山県那智勝浦町産業課
山本 真也 和歌山県東牟婁振興局
梅本 利樹 和歌山サーフィン連盟会長
鈴木 高二朗 (独)港湾空港技術研究所沿岸環境領域
汐崎 大 和歌山県那智勝浦町 那智漁業協同組合組合長
片谷 匡 和歌山県那智勝浦町 勝浦漁業協同組合組合長
中村詔二朗 和歌山県那智勝浦町町長
仁坂 吉伸 和歌山県知事